FF01Evo.architecture

ダンパーはCVAスーパーミニベースだが、テフロンピストン、MIPブルーOリング、TiN(窒化チタン)コートシャフト、これに併せて穴をいったん塞ぎ研き出しをかけたアンダーキャップを奢り、オイルの効き具合、"くの字曲がり"精度ともに下手な削り出しダンパーに劣らないユニットに仕上げた。長さの調整も可能で、少なくともタミヤ製スーパーローフリは相手にならない。少ストロークでもキッチリ働いて欲しいロングスパンサス車に対しては有効なモディファイ。もっとも、始めから長さ55mm±2mmくらい(ボールジョイント間)を作れる精度の高いダンパーを持っていれば無論それでも良かったのだが...

オイルは前後アソシ#35を基準に、アンダー時は重く、オーバー時は軽くしている(番手はタミヤの樹脂製標準CVAダンパーの倍くらい軽くてOK)。
つまり、(ロールを大きく取っているせいもあり)減衰力については伸び側を重視している。

もちろん、ロールの深いところでタイヤが良い接地状態となる様、キャスター・キャンバー・アッカーマン比(トー角)がキマっているのは大前提だ。


フロントショック長およびバネレートは、無負荷最低地上高3mm/伸び6mmで、走っていて底擦りしないギリギリの軟らかさ...55.5mm(ボールジョイント間)にタミヤ標準長黄色+テンション3.8mm...を基本に。
必ず、縮み以上の伸びストロークを取り、車を動かしてみてロールを阻害しない様にセットしている。

硬くすると、一見、初期ハンドリングは良くなる。が、後半はアンダーになる。
これは、ステア&ロール荷重をコーナー初期に使いきってしまい、後半は前輪荷重が抜けてしまうからだ。
初期ハンドリングに頼って無理に曲げようとしても、車がコジれて大きく減速するのでタイムは出ない。リアが負けてスピン、ハイサイド転倒、も、し易くなる。何れもフロントが硬い、リバウンドが足りないために起こる。
グリップを持て余し、曲げるためにではなく、スピンや転倒をするために使っているとしたら・・・

リバウンドが多いとハイサイド転倒し易くなる」と思っている人は多い。
もちろん、多過ぎれば、切り返しではむしろコケやすくなる()。しかし、どこまで硬くすれば良いのか? リジットにしてみて、解決するどころかむしろ悪化した場合は?!

FFは十分な自前荷重があり、ターンイン時は極端なフロントオーバーグリップとなる。
初期グリップは捨て(と言うより「ロールとして蓄え後半に持ち越す」と言った方が適切)、後半アクセルをガバッと開けてもアンダーを出さないセットが、少なくともハイグリップオンロードでは有効。
バネレートは「静的な重量配分」ではなく「動的な荷重配分」により決まる。「Fヘビー=F硬」ではなく、むしろ逆なのだ。


「F硬くR軟らかく」は、

  1. リアが硬く乗り心地が悪いのを嫌う、
    (リアは「軟らかくなくてはならない」のでクルマ全体のロール剛性を重いフロントセクションで決める必要がある、そのためにフロントを固めざるをえない)
  2. 初期ハンドリングでキッカケを作るかリアをロックさせてドリフトする前提の乗用車やラリーカーのセッティング
...であり、
  1. リアロックとフロントドライブを同時に出来ないRCを、
  2. スライドの瞬間スピンに至る高速ハイグリップサーキットで走らす、
...様な場合はNGであると考えている。

(RCでも、スピードが遅くグリップもあいまいで、流れ出しからスピンまでの間にスロットル開けられるかフロントも滑る4輪ドリフト状態ならばF硬R軟も悪くないと思うが...)

自称車マニアや自動車雑誌のライターには「減速ターンイン時にリアが流れる=スパルタン、流れない=マイルド」と思い込んでいる人が多いが、"どんな路面に対しても"そうであると言うなら、間違いだと思う。初期ハンドリングが良いのに錯覚し実はアンダーなのをいつまでも減速ステアし続けるからスピンに至る...巻く=オーバーステア、では無いのでは?


フロントをロールさせているので、フロントより軟らかいリアは絶対NG。
実車は乗り心地重視なので、真似しても走らない。高速ハイグリップサーキット仕様のFFにとって、フロントよりロール剛性の低いリアは邪魔な尻尾にしかならないのだ。ロールに対してしっかり踏ん張るリアサスは、

...てくれる。もっともこれは、FFに限った話ではないが。

軟らかいと、基本的にグリップは落ちる。
リアサスを「車全体に対するスタビライザー」くらいに...ハンドリング、切り返しの速さも、大半はリアに依存する...と考えている。

55mm(ボールジョイント間)にタミヤ標準長黄色+テンション1.5〜2mm。タミヤ黄色にゼロテンション〜+0.5mmくらいのレートを基準にしている。前後同じバネ、フロントに若干テンションかけ自重で沈む分F軟R硬のバランスとなる。リアのリバウンドは1mm前後。


無論、対角ロール時リアインリフトを避けるためにはリアにもリバウンドは欲しいが、FFのリア自重でフロント以上のリバウンド取ろうと思ったらとんでもない軟らかさが必要で、実質不可能(*)。どうしても巻いてしまう場合、
まずフロント側から、

等で改善し、リア側は ...等で対処、リアのバネレートは極力触らない。FFのリアは軽いので、例えばタミヤ黄色→赤は変化が大き過ぎる。その中間のバネを何種類も持っていれば話は別かも知れないが...ただ、これは基準となる最適なバネレートの前後バランスが出ている場合の話。

基準が出るまでは...リアのバネレートは最適値レンジが狭くベストより硬くても軟らかくても巻く、硬い時の巻き方と軟らかい時の巻き方は微妙に違うので、これを体で覚えるしかない。
まずフロントを限度一杯に軟らかく作っておき(フロントのオーバーグリップ主因で巻くのを防ぐため抜いておく)、

  1. フロントのロールが遅れて伝わりロールしつつ巻く場合は面圧不足なので硬くする、
  2. ロールしないうちにリアが抜ける場合は低μなので軟らかくしてみる
...様な感じ。
  1. はインナーが変に軟らかいと似たような動きになることがある。車が軽いからといって下手に軟らかくするとグリップが落ちるので、ご当地の標準硬さでセットすること。
  2. の場合、タイヤ次第では、しばらく我慢するかリアだけウォーマー当てて巻きが抑えられれば、最高によく曲がる。
バネレートがベストなら、リアはダンパーオイルにはあまり神経質でない。フロントと同じくらいで良い。

(*)見た人によると、コーナーというコーナーでハデにインリフトしているらしい。自分では残念ながら見た事が無いのだが...ちなみにコーナリング中、入口以外スロットルはほとんど全開、それでもグイグイ内側に切れ込んで行けるFF、なのである。


「前後別タイヤ」には抵抗を感じないでもない。が、

  1. フロント側は自前荷重により案外アンダーには強い、
  2. リア荷重不足は如何ともし難い、
  3. リアは温度が上がらないのでウォーマーもほとんど効かないことがある、
と考えると、夏は4輪同じタイヤでイけるセットである、ならば、冬場に限りアリだと思う。


オーバーグリップによるハイサイド転倒には2つのパターンがある。

  1. 高速コーナー。ロールアウト側が踏ん張ってリバウンドを使い切り、そこから一気に持っていかれる。
    バネを硬くし・伸び側ストローク絞るとむしろ悪化する。
  2. S字の切り返し。ロールアウト側が沈み、戻るより早く逆ステアを当てることでひっくり返る。
    バネを軟らかくし・伸び側ストロークを多く取るとむしろ悪化する。

リアを硬くしてクルマ全体のロールも抑えた、ダンパー減衰力も色々試した(ステアの切り返しに応答するには伸び側は軽くなくてはいけない...遅いと転倒する...が、縮みを保たせる・リバウンドを使い切るのを遅らせる、ためには重い方が良い)、ハンドリングが甘くなるのでフロントバネもあまり軟らかくしたくない・・・

この場合、スタビライザーが非常に有効。
軟らかめのバネと硬めのスタビを併用するのが良い。(パターン1.に対しては、スタビの効果は少ない。リジットにスタビは無意味だからだ)。